【当院のテーマ】
- 「確かな健康観の育成」
- 「健康的な行動の確立」
- 「健康な歯と口の育成」
当院では、お子さまたちに対する歯科医療を育成歯科と位置づけております。育成歯科とは、ただ単に、“むし歯を予防する”、“むし歯を治療する”、“歯並びをきれいにする”、などということではなく、健康な大人(健康的な考え方、行動をともなった人たち)を育成していくことと考えます。
お子さまの歯科医療で最も大切なことは、保護者の方が確かな情報を集め、かわいいお子さまをどのようしたいかを方向づけることだと思います。当院の考え方を、お子さま、保護者の方のお口の健康作りに役立てていただけたら幸いです。お子さんの人生はこれからです!かわいいお子さまを上手に導いてあげられるのは、保護者方、皆様であると思います。
歯学博士、日本小児歯科学会専門医
やまもと小児歯科矯正歯科クリニック
院長 山本 誠二
育成歯科としての当院の考え方
小児歯科医療には“確かな健康観の育成”、“健康的な行動の確立”、“健康な歯と口の育成”の3つのテーマがあると考えております。その中で“確かな健康観の育成”、“健康的な行動の確立”とはお子さまが大人になった時に健康的な生活習慣を身につけるために必要なものであります。当院では、小児歯科医療を通じて育児の中の一つのテーマである規則的な生活リズム作りを中心に診療を行っております。“健康な歯および口の育成”とは、お子さまの健やかな成長を見守り、また誘導することで、お口ならびに全身の成長発育に大きく関係する噛み合せの育成を、専門医の立場で日々診療を行っております。
規則的な生活リズムの形成
お子さまは、大人になるまでにあらゆる人々に関わりながら生きています。その関わりを下図に示しますように、お子さまは生まれて間もなくは家族の輪の中のみで生活をしており狭い空間の中に存在します。しかしながら、世の中との関わりが増えるごとにお子さまを取り巻く輪が自然と大きくなっていきます。
このようなことより生活習慣の確立は、お子さまを取り巻く輪が大きくなるに従い生活リズムの規則性の確立は困難になることが考えられます。
最も生活習慣作りを容易に行う時期は、家族のみがお子さまの行動を全てコントロールできる時が最適と考えられます。一般的に3・4歳になると精神的な成長も起きるとともに、そのころより保育園・幼稚園に行き始めることが多いことを考慮すると、このころが規則的な生活習慣作りはピークであり、その後はお子さまを取り巻く輪は次第に大きくなり規則性は崩れていくことが予測されます(下グラフ)。
子供の成長に関わる仕事をさせていただいている私達にとっての目標は、お子さまが“確かな健康観を有し健康的な行動”を身に付けた大人へとお子さまを成長させていくことです。小児歯科という専門医の立場から育児の中で重要なことは、むし歯予防ではなく、規則的な生活習慣作りが最も重要であり、最終的な目標は私達が関わったお子さま達が規則的な生活を送れる大人へとつなげ、その後健康な生活が送れるようにしていくことだと考えています。
では先ほど、専門の立場にも関わらず私たちの目指す最終的なゴールではないと述べた“むし歯予防”は何のために行っていくか?を考えたいと思います。不規則な生活をしている場合に、全身の中で最初に兆候が現れるのは口の中と考えられます(下写真)。
むし歯は歯質が未熟(石灰化が不十分)な時期である子供の病気であり、むし歯が存在するということは不規則な生活習慣を有している可能性があることを意味しています。
育児を完璧に行うことは大変なことで、子供だけでなく保護者の方もへとへとになってしまっていたのでは、なんのための子育てなのか?皆様に楽しく健やかな育児を目指して頂きたく、そのためには手を抜くところは手を抜き、要領よく育児を行うことが重要と考えます。それを助けるのが私たち子供に関わる医療従事者の役割と思っております。もし、子供の歯にむし歯を見つけたならば、その意味はむし歯ができる原因がどこかにあること、つまりは生活環境に不規則な生活習慣があるということです。そのため、生活リズムの再確認を行い、不規則性を見つけ、見つかれば自然と行動変容できると考えられます。育児で大切なことは、むし歯予防ということではなく規則的な生活習慣作りであり、その付随としてむし歯予防があると我々は考えております。
しかしながら、我々は歯科医療従事者であり健康な生活を送るためには、当然むし歯を作って欲しくはありません。ならば、乳幼児期のむし歯予防は何のために行うのか考える必要があります。
歯科医療とは?その中での育成歯科の位置づけ
歯科医療には小児歯科、一般歯科、矯正歯科などがありますが、全ての歯科医療は噛み合せを中心に行われるべき処置であると考えます。人は、生まれてから成人、そして高齢者まで口の中の環境は変化していきます。子供の時に出てきた歯はその位置に一生とどまるのではなく、噛み合せ、あごの位置に大きく影響を受け、常に動いているのです。お子さまは成長期であり、口の中も大きく変化していきます。つまり、噛み合せが育成していく段階なのです。逆に、成人以降は出来上がった噛み合せが崩れていく過程なのです。その成人以降の崩壊を少なくするには、如何に成長発育期でバランスのよい噛み合わせを作り上げるかが重要であり、小児歯科医療を通じてお子さま自身が持っている成長発育能を十分に引き出し、かつ不正であれば噛み合せの育成をお手伝いすることが我々育成歯科の役割と考えます。
育成歯科での“むし歯予防・治療”、“矯正治療”の位置づけ
先ほどまで述べていたように、小児歯科医療とは噛み合せを育成(咬合育成)する医療と考えております。一般的に、咬合育成とは咬合誘導(小児期の矯正治療)・矯正処置をさすことが多いかと思われますが、広義に考えればむし歯予防・むし歯治療も咬合育成に含まれます。なぜならば、むし歯予防・むし歯治療とはお子さまの体の成長を維持させることが目的とされる治療で、噛み合せを壊さないようにしお子さまが本来持っている成長をさせることが主たる目的だからです。
反対に、咬合誘導および矯正処置とは、積極的に成長を誘導していく治療で個々の成長パターンを変えていくことを目的としています。
診療方針
成長発育期でのむし歯予防・むし歯治療
お子さまは成長発育期にあります。お口の成長発育には噛み合わせが大きく影響し、噛み合せに手を加えることなくお子さまの成長を維持させることが成長発達には重要なことと思われます。それを担っているのがむし歯予防・むし歯治療なのです。むし歯予防・むし歯治療は成長発育の誘導にとって大事な役割なのです。
むし歯は子供の病気です。まずは“むし歯予防”を!
むし歯を予防するには、お子さまの規則的な生活習慣を作り上げることが重要と考えます。また、成長発育期であるお子さまのお口の中の環境は変化していくものです。むし歯のできやすい時期・部位は、お口の中のあらゆる環境に影響を受けています。ですので、当院では年齢的にむし歯のリスク因子を出来るだけ多くの資料より模索しリスク分析を行った上で、保護者の方に情報提供を行うとともに、お子さまの環境に応じた口腔衛生管理を行っています。また、お口の中の健康を考えるなら長期の口腔内管理が重要となります。そのために、お子さま達を含め患者さまが安心に来院できる病院、“楽しく”“安全で”“身近な”“信頼できる”ことをテーマに病院作りを行っています。
当院の定期健診による歯科予防保健システム
むし歯がなく、美しく機能的なお口の大人に育成することをお手伝いするのが小児歯科です。また育児にとって大切なことは、お子さまの生活習慣を作り上げ健康な生活リズムを維持できる習慣を身に付けさせることだと思います。お子さまが成人になったとき、子供の頃の生活習慣が影響されることは確かなことです。
当院の定期健診の主な目的は、むし歯をはじめお口の中の病気を発生しないようにし、またお子さまの健やかな成長発育を管理し、健康観を持たせ、健康なお口そして全身の健康を保つようにすることです。また、お子さまにとっては予防的な歯科受診が生活習慣に取り込まれ、大人になっても治療のためではなく予防的定期健診の継続が期待されます。
本院では、生活習慣作りを重視した定期健診を行っておりますので、ご利用して頂ければ幸いと思います。
メリットがないと削らない・抜かない – 予防・抑制・治療
お口の中の管理(口腔内管理)には“予防・抑制・治療”という考え方が必要であると考えます。健康を維持向上させる口腔内管理を行うには、むし歯の発生を抑制するための予防的な管理と、治療を含むむし歯に対する進行抑制を行う管理が必要なのです。一般的にむし歯の治療とは削って詰めることが主体であり、また患者さま自体も削る治療が当たり前の処置と捉えられがちです。それならば、削って詰める処置の意味合いを考えなければなりません。削って詰める治療(修復治療)とは病巣を除去して欠損部の回復を行うことでありますが、これはむし歯の進行を抑制しているだけの処置と考えております(下写真)
むし歯の進行の抑制ができる可能性が高いという点、審美性という点では、修復処置は優れているものと思われます。しかしながら、修復処置では、歯の形態は絶対に元には戻せません。当院では成長発育に大きく影響する噛み合せをずらさないことが重要と考えているため、噛み合せを崩壊させるほど処置する価値が修復治療にないなら他の進行抑制処置を選択すべきであると考えています。
上左のレントゲン写真は歯と歯との間のむし歯が進行した症例を示します。歯と歯との間の黒い像がむし歯の透過像であります。黄色の円の透過像が赤色の円の透過像のように拡大しているようならば進行していることを意味しています。このように、進行を抑制できないならば噛み合せを崩壊させてでも修復治療が必要と考えます。しかしながら、上右のレントゲン写真のように歯と歯との間のむし歯が進行しないならば(黄の円から黄色の円のように透過像の大きさに変化が認められない)、噛み合せを崩壊させる修復治療は必要ないと考えます。明らかに進行が止められない症例においては、これ以上の悪化を防ぐという意味合いで修復処置を選択することはあります。しかしながら、進行が抑制できる可能性がある場合は一時点での資料で処置の選択をするのではなく、ある一定期間をおいて経過観察し再度の評価で処置を決定することも必要と思われます。当院では、予防も大切なことではありますが、早期に見つけ対応し削らず管理すること(客観的な評価と基準が必ず必要です)が重要であり、噛み合せを崩壊させず個々の成長パターンを崩さないようにし、咬合育成を行っています。
歯科恐怖の予防
子供もさることながら大人でも医科以上に歯科治療に対して不安・恐怖を抱いている人は多いと思います。なぜ歯科治療が心理的な負担になるか考えてみる必要があります。
同じ刺激が加わっても、同一人物ですらその認知の仕方はその時の肉体的コンディションや、さらには心理状態によって異なります。まして育った環境や性格が違えば全く異なることは言うまでもありません。また、直接歯科経験がなくても周囲から歯科治療の痛みや不安感などのマイナス面を聞かされて歯科に対して悪い先入観を持ち、また歯科治療を無造作に受ければ歯科治療は痛い怖いということが実証され、歯科治療が心身に及ぼす悪影響は大きいものになるのです。歯科治療に対する恐怖心は幼児期に始まると報告されています。それならば、予防を通じて幼児期のお口の特徴的な病気である“むし歯”を起こさないようにしておけば歯科不安・歯科恐怖はおきない可能性があるとともに、我々歯科医療関係者とお子さまたち周囲の人々、つまりお母さま方家族の人々が歯科治療は怖くないという積極的な姿勢を示しておけば、成人してひいては親になってからも自分の子供への歯科医療に対する積極的な態度につながることになります。また、歯科医院においてお子さまにとって楽しい環境が提供されるならばお子さまのみならずお母さま方にとっても快適なものとなるでしょう。そのことから、お子さまにとって幼少時からの歯科への健康のための来院(定期健診)が、大人になっても歯科への来院が“痛いむし歯治療”のためではなく“健康を維持する”ための受診習慣となると思われます。
当院での歯科医療を通じて、お口の健康を保つと同時に、精神的な歯科への健康観の向上に努めていきたいとスタッフ一同考えております。“むし歯”がないことは大切ですが、お子さまたちに“管理できる環境”を提供することが我々の仕事と思っております。
感染予防
切削器具はもちろんのこと患者様に使用する器具は可能な限り滅菌消毒を行い、またスタッフ全員が患者様個別の手袋を使うなどして院内感染予防には十分に気を配っております。